今年2月、佐賀の名護屋城址へ向かう途中の大分自動車道より撮影した

朝霧に沈む湯布院盆地です



大分県の湯布院盆地では、秋から春先にかけて、風の弱い良く晴れた日の
早朝に、盆地全体が朝霧に包まれて大きな湖の様に見える こうした現象を
楽しむ事が出来ます

湖底から温泉と清水の両方が湧く小さな湖があって、そこから流れ出る川の
水蒸気が、湯布院盆地全体をすっぽり包み込む朝霧の主因とも言われてます

こちらは九州横断道路やまなみハイウェイ沿いの展望所・狭霧( さぎり )台より
見下ろした湯布院盆地



風薫る緑豊かな朝霧の里、湯布院

神代の昔には本当に大きな湖だった、という伝説も残されているのです

湯布院は金鱗湖に纏わる伝説を情緒たっぷりに描き記した解説板が、
湯布院町 昭和浪漫倶楽部さんの店先に掲げられていました



『 伝説の金鱗湖 湯布院盆地は住古の昔、大きな湖だったそうです。
伝説によれば、由布岳の女神・宇奈岐日女神に、湖の干拓を命じられた
蹴裂権現が、西の湖壁を蹴り裂いて水を流し、今の湯布院盆地が現れました。
が、湖底に棲んでいた一頭の大きな龍は困り果ててしまいます


そこで龍は天祖神に 「 湖の全ては望みません。 ただ、ここに少しばかりの
安住の地を与えて下さい 」 と訴え、天祖神はその願いを聞き入れて、温泉と
清水が湧き出る岳本の池( 金鱗湖 )が残されました 』


記述には、湯布院創設の女神様や、神に姿を変えて現れた仏様( 権現 )の
名が登場しますが、とりあえずは伝説の地・金鱗湖に赴いてみましょっか


由布院駅前から由布岳が見える東の方角へ真っすぐ歩き、湯の坪通り終点で
右折。 朝霧坂を下ると金鱗湖へ続く 金鱗湖通りに出ます。
ここは金鱗湖南側の湖畔




往古の昔、大きな湖だった湯布院盆地を、実り豊かな土地に変えるため、
由布岳の女神・宇奈岐日女( うなぐひめ )が蹴裂権現( けさきごんげん )に
命じて干拓した際、湖底に棲んでいた龍

棲家を残してほしいと懇願。 その願いを聞き入れて、龍に金鱗湖を与えたのが
この

素盞鳴男命( スサノヲノミコト )、軻遇突智命( カグツチノミコト )です。

天之御中主神は、まだ世界が混沌とした天も地もない状態だった頃、
高天原に現れた最初の神様・別天神( ことあまつかみ )5神の筆頭です。
素盞鳴男命はご存知の通り、天照大神の暴れん坊の弟として有名ですよネ

出雲へ追放されて地上の神となり、5代後に大国主( オオクニヌシ )神が誕生。
軻遇突智命は、別天神5神に続いて登場した神代七代( かむよななよ )と
呼ばれる神様グループのメンバー・イザナキ&イザナミが授かった赤ちゃん

なのですが、火の神様

力尽き、黄泉の国へ。 で、怒り狂ったイザナキによってカグツチは命を奪われる
ものの、その亡骸からは岩、剣、雷、炎、滝、谷、坂の神様が生まれたそうです。
( 先日の記事でご紹介させて頂いた里中満智子著 『 古事記 』 参考 )
この3尊が龍の願いを聞き入れてあげた、情け深い天祖の神様なんですね

神話世界から、ちょっと現にお話が飛びますが、由布岳の下にある小さな湖と
いう意味合いで、昔は 岳下( たけもと )の池と呼ばれていた金鱗湖

湖畔を散策中に、金鱗湖の名付け親である大分市鶴崎地区の儒学者
毛利空桑( くうそう )先生のエピソードが紹介された解説板を見つけました


毛利空桑先生が、湖畔の温泉( 下ん湯 )

魚が一匹、水面で跳ね



金鱗湖と名付けたという、地元の方には言わずと知れたお話ではありますが、
空桑先生は素敵な発想の持ち主だったんだな~なんて、聞く度に思います

そういえば昨年お邪魔した毛利空桑記念館のレポ、まだ書いてなかった


館内に飾られていた吉岡妙林尼のゆるキャラ 妙林ちゃんばかりに気を取られ

画像中央・茅葺屋根の建物が





沢村一樹さん主演の浅見光彦シリーズ 『 姫島殺人事件 』 で、
加藤治子さん演じる光彦の母・雪恵と光彦が湯布院で落ち合うシーンで
使われました



ドラマの中では、ちょっとあり得ない位に湖面からもうもうと湯気?白煙?が
上がっていて、相方と 「 ドライアイスかな~、どんだけ使ったんやろ~

等々、どーでもよいツッコミを入れつつ、大変楽しく拝見させて頂きました

そういえば沢村一樹さん、5月4日にわさだタウンへいらっしゃるみたいです。
トークショーとの事ですが、もしかしてサラリーマンNEOのキャラネタなども
披露して下さるのかしら


浮世から再び、神話世界へお話を戻しまして

ここは由布院盆地創設の女神ゆかりの社・宇奈岐日女神社です


祀神は、神代七代の國常立( クニノトコタチ )尊、国狭槌( クニサツチ )尊、
天孫ニニギとサクヤヒメの子・彦火火出見尊( ホオリノミコト = 山幸彦 )、
山幸彦とトヨタマヒメの子・鵜葺草葺不合尊( ウカヤフキアエズノミコト )、
ウカヤフキの子で後の神武天皇・神大和磐余彦( カムヤマトイワレビコ )尊、
神武天皇の子で、後の二代・綏靖天皇・神沼河耳( カムヌナカワミミ )尊。
里中満智子先生の著書・古事記に胸を打つエピソードと共に登場する神様達が
勢ぞろい



湯布院創設の女神の名が付けられ、美しい池に浮かぶ様に社殿が鎮座する
宇奈岐日女神社。 ところで、昔々 大きな湖だった湯布院を干拓させたのは
この女神様ですが、実際に干拓事業を成し遂げたのは蹴裂権現さんです。
高千穂探訪以来、古事記の面白さと奥深さにハマってしまったまーりたん

女神の命令で、湖壁を蹴り破ったこと


力持ちの神様だけに、タジカラオさんとか、その正体はもしや古事記に登場する
有名な神様ではなかろーかと思い、ちょっと調べてみたところ予感は的中


蹴裂権現さんの正式なお名前は、道臣命( ミチノオミノミコト )でした。
これはなんと初代・神武天皇から授かった名前なんだそうです

初名は日臣命( ヒノオミノミコト )。 別天神・高御産巣日( タカミムスヒ )神の
末裔とされ、神武天皇の東征では先鋒役を務め、神武天皇を命の危険から
救ったり、神武天皇に婚姻のアドバイスをしたりとまぁ、つまり腹心ですね

前に太宰府の記事で少し触れた大伴旅人など、大伴氏の祖にも当たるとの事。
道臣命は、里中満智子先生の 『 古事記・壱 』 252ページに堂々登場します。
お名前こそ出ませんが、神武天皇を罠にはめ謀殺しようとした宇陀の領主を
追い詰める場面その他と、ウィキペディア道臣命の記述とが合致します


ご興味ある方は、本屋さんでチラリとチェックされてみて下さいネ

それにしても、湯布院盆地を創った蹴裂権現様が、初代・神武天皇の側近
だったなんて


これだから郷土史の探究は、どうにも止まらニャい~・・・って、あらっ
不思議の国のアリスに登場するチェシャ猫そっくりな狛犬くんを発見


宇奈岐日女神社・朝霧の神門をバックにニタリ顔で鎮座するアナタは、
狛犬君・・・ですよね




まぁいいか

というわけで、始まりましたね大型連休


我が家はいつもの週末と変わらず、気の向くまま、郷土や隣県の探訪を
のんびりディープに楽しむ予定です



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